時間と場所の制約から解放
建築設計事務所では、意匠的な理由に限らず、減額調整も含めて、ギリギリまで設計仕様の変更を行うことが少なくない。
加えて、事務所から離れた地域での案件も多く、事務所内外での情報のスムーズな共有が仕事のクオリティに直結する。建築設計の枠を超えて、IT(農業)の分野でも精力的に活動する山中祐一郎氏は、情報の共有について次のように語る。
「4〜5年前まではメールでのやり取りが主でしたが、メールの量がとても多く、見逃すこともあったので、今はスマホで確実に情報が確認できるよう、SNSのグループチャット機能を有効に活用しています。PDFやExcelなどを添付できる点がいいですね。ただし、ふと、設計の仕様を変更する際は、その都度ファイルを開いて指示を書き込み、ファイルを更新して再度アップロードして通知する必要があり、多少の煩わしさを感じていました」。
「その点、『BuddyBoard』は、ファイルに指示を書き込んだ時点で、登録したメンバーと即時的に情報を共有できます。〝情報を送る〞という行為がなくなるのは実に画期的です。共同編集作業を端末で行うのですが、クラウド上のデータとシームレスに連携しているので、ストレスなく作業が行えます。加えて、Web会議システムのように画面を共有していれば、同時に複数人が指示を書き込めることに加え、『BuddyBoard』ではメンバー間で時間を調整して会議を行わなくても、自分が対応可能な時間にクラウドで共有されたファイルで指示を行うこともできます。もちろん、ネットワークの環境が整っていれば、どこからでもアクセス可能。時間と場所の制約から解放されるシステム――であると形容できるでしょう」。
スケール感を常に把握できる
実際に今回は、山中氏の設計パートナーである秋山照夫氏も「BuddyBoard」を使用。軽井沢(長野県)に計画中の戸建住宅の設計変更に関するコミュニケーションを行ってもらった。
「最も便利に感じた点は、常に最新の情報がアップデートされていること。以前は、打ち合わせに参加していなかったメンバーなどに最新の情報がうまく伝達されないことがあり、手戻りなどが発生していました。しかし、『BuddyBoard』なら、最新の情報がメンバーに漏れなく伝えられるので、コミュニケーションギャップが生じません。建築特有の話では、スケール機能が付いているのがいいですね。「iPad」の画面を拡大縮小したとしても、図面のスケール感を把握できますし、測定機能を使えば、図面上に表現された2点間の実距離や面積などを算定できます」。
「加えて、サポート体制が充実している点もいいですね。われわれのようなアトリエ系の設計事務所では、図面上に描き込む線の量がとても多く、今回、スワイプして拡大する際などに、CPU使用率が増大するなどして、フリーズしてしまうこともありました。ですが、描画負荷の増大にも対応できるよう、開発元のブラザー工業さんには即座に対応していただき、問題を解決していただいています」。
以上のように「BuddyBoard」は、設計事務所の内外で情報を正確かつ迅速に共有するツールとして有効である。近年では労働時間の削減やリモートワークの普及もあり、質の高いコミュニケーションをどのようにとっていくかが各業界に共通した課題となっている。「アトリエ系設計事務所の働き方改革につながるのでは。これははやりそうですね」(山中氏)という言葉が示すように、建築業界からの引き合いも多いという。「BuddyBoard」には、建築の仕事に革命をもたらす大いなる潜在力が備わっているといえるだろう。
2D Drawing with BuddyBoard

直進階段の立面図について、手摺のディテールや取り付け高さ、桁の納まりについて修正を指示している様子。「修正後に、右上の通知機能をタップすれば、メンバーに情報を共有できる、というのはとても便利だと感じました。ただし、通知をOFFにする機能があれば、通知を受け取る側に対してストレスを与えることがなくなるので、より理想的だと思います」(秋山氏)
「BuddyBoard」を囲んでコミュニケーション

「BuddyBoard」を囲んでコミュニケーションを図る山中氏(左)と秋山氏(右)。
「私は“時間デザイン”という概念に興味があり、地域の生産者と実需者をリアルタイムでつなぎ、地産地消を促進するWebサービス『地産Market』(PROPELa)を立ち上げるなど、ITを活用したサービスには非常に興味を持っています。“時間デザイン”という概念において、『BuddyBoard』は私の理念と強く共鳴するものであります」(山中氏)
「BuddyBoardとは?」

「iPad」専用の手書きノートアプリ。チームメンバーと資料を共有し、相互にアイデアを書き込むことで、オンラインコミュニケーションを確実・迅速に行い、よりよい意思決定を実現する。画像の共有・共同編集も可能。ライセンス契約となっており、費用はユーザー数に応じて発生する。1人につき1ライセンスが必要。初年度はクラウドストレージ使用量が無料。

